1840年頃、一人の男がアイルランドからロンドンに移り住んできた。
そして、ソーホーにタックルショップを開店する。
このショップはたちまち評判になり、当時の名アングラーが通いつめるようになった。
男の名は
ウイリアム・ブラッカー、
サーモンフライに初めて芸術性を持ち込んだ人物だ。
「サーモンを釣るには最高に美しいフライでなければならない」という理念のもと、ブラッカーの作りだすフライは流麗な姿、適切で自然な色遣い、並はずれた技巧によって多くのアングラーを虜にした。
そしてなんといっても彼の名を歴史に刻み、不滅のものとしたのは
“Blacker's Art of Angling”1842年
“Blacker's Art of Fly Making”1855年
である。
1855年の“Bell's Life In London”誌は
「ブラッカーのフライは芸術の行きつくところの優雅さを身につけている」
と称賛。
フライが単なる釣りの道具から芸術品へと変貌をとげた瞬間である。
この著作は、第一線のドレッサー著したものとして大きな反響を呼んだ。
内容は当時のサーモンリバーとそこで使われるフライと釣り方などであるが、
際立っていたのはカラーイラスト入りで紹介されたブラッカーのオリジナルパターンであった。
しかし、残念なことに彼の意に反してか、パターンの記述には不完全な部分が少なくない。
加えて自分のパターンを忠実に伝えようとしたカラーイラストも正確とは言えないものもある。
当時は本を作るのにお金がかかり、写真を用いず、画家によるイラストが用いられていた事による悲劇なのだろうか?
したがって、ブラッカーのパターンを再現するには作り手にセンスと想像力が要求されることになる。
◆さらなる謎、イージーメソッド
“Blacker's Art of Fly Making”にはドレッサーを混乱させるパズル?が仕組まれている。
それが
イージーメソッド。
ブラッカー曰く、こうすれば美しいフライが簡単に巻ける、という方法なのだが、
一度でもフライを作った事のある人なら首をかしげてしまう。
以前の記事、
Champion製作過程を公開の中でフライを作るプロセスを紹介しました。
①からスタートして⑨で終わる
これが一般的で簡単かつ確実な方法です。
ブラッカーもこの方法を採用しているのですが、
もっと良い方法があると紹介しているのがイージーメソッドと呼ばれる方法です。
一方、イージーメソッドの順番は上の通りです。
この方法は当時のドレッサーやアングラーにとっても謎だったようです。
ちなみに私はこの方法で見事なフライが作れるとはとても思えません。
もしブラッカーがこの方法で、誰もが引き込まれるような芸術的なフライを作れたのなら、
われわれのと言うより人の想像をこえた次元の超絶技巧の持ち主だったに違いない。
物議を醸す部分も多々ありますが、
ブラッカーこそが豪華なクラシックサーモンフライの原点という事実はゆるぎないものです。
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2014-07-19 15:49
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